不動産に関するニュース
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住めば住むほど価値が上がるマンションに
ダブル認定をスピード取得
管理状況を“見える化”するマンション管理の認定制度「マンション管理計画認定制度」(国および地方自治体)と「マンション管理適正評価制度」((一社)マンション管理業協会)が4月にスタートした。いずれも建物の管理状態や管理組合運営を客観的に評価するもの。その2つの制度で同時に認定されたマンションがあると聞き、取得のきっかけや取得に至るまでの取り組み、また日々どのような組合活動を行なっているのか取材してみた。
2つの制度で初のダブル認定を受けたマンションは、1996年7月竣工で、東武東上線「東武練馬」駅から徒歩10分に立地する「パーク・エステート上板橋」(東京都板橋区、総戸数298戸)。病院や保育園、公立学校が徒歩圏内という住宅街にあり、駅周辺には銀行やスーパー、飲食店など生活利便施設が整っている。建物は南に向いてU字型に配置され、敷地内には全戸分の駐車場や駐輪場を用意。集会場やロビーラウンジ、キッズルームなどの共用設備も備わっている。
竣工当時から住み続ける居住者の割合は約6割。自分の住まうマンションに愛着を持ち、「終の棲家」と考える居住者も多いだけに、管理に対する意識は高い。建物の劣化や不具合を調べる住民アンケートなどでも、8割超の居住者から回答を得られるという。
◆排水管の漏水をきっかけに…
同マンションの管理組合が認定取得に動き始めたのは、今年6月。2019~20年にかけて6件発生した、台所排水立管の漏水事故がきっかけだった。
理事会の判断で「漏水対策専門委員会」を20年の秋に発足。居住者の立候補によりメンバーを集め、現理事長の山元正宜氏、副理事長の田原 肇氏が中心となり、原因究明に向けた調査を開始した。専門家へのヒアリングを実施し、排水立管を樹脂管に更新して点検口を設置することに。既存管の腐食状況を記録し、同様の課題を抱えるマンションへの情報提供も行なった。
こうした取り組みが評価され、国土交通省の令和4年度「マンションストック長寿命化等モデル事業」工事支援型(長寿命化改修工事)に採択され、工事費用の3分の1が補助されることに。5月に始まった工事は、9月14日に無事終了した。
しかし、この排水管改修のために、本年予定されていた2回目の大規模修繕工事が遅れに遅れた。また、補助金があったとはいえ予定外の改修費用により、来年大規模修繕工事を行なうと積立金はわずかしか残らないことが判明した。
「もう一度、同事業への申請にチャレンジしてみようと考えました。そのとき、漏水工事でお世話になった専門家の方から認定制度の話を聞き、取得すれば申請時のアドバンテージになるのではないかとアドバイスされたのです」(山元氏)。
◆浮き彫りになったマンション管理の課題とは?
制度について詳しい話を聞くため、6月に山元氏らは板橋区役所の住宅政策課を訪ねた。板橋区は、全国初の管理計画認定マンションを輩出しており、第2号認定を目指していたところ。早速、区の担当職員が7月に同マンションを訪れた。2回にわたり、区が設けた25項目の認定基準(国は16項目)をクリアできるか調査したところ、3つの課題が浮き彫りとなった。
(1)区分所有者名簿(組合員名簿)および居住者名簿、要援護者名簿の作成
これについては、理事会で「管理会社が持っているので必要ない」「情報漏洩のリスクがある」といった意見が。区の担当職員に相談したところ、「毎年の更新作業が必要なので、この機会に一人ひとりの情報を得ておいたほうがいい」とアドバイスを受け、理事会は居住者の理解を得るために動いた。
「緊急時や災害時などの対応に際し、名簿は常に正確な情報に更新していくことが必要であることを資料にまとめ、全戸に配布しました。ロビーの掲示板にも『個人情報の提供の必要性とお願い』を貼り出すなど、居住者の理解を得るために奔走しましたね」(同氏)。
(2)名簿の取り扱いに関する規定を含む管理規約の改定
国土交通省が示している「マンション標準規約」に準じた改定・細則とした。
(3)長期修繕計画の見直し
認定基準に従い、計画期間30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるよう設定されていること。一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと。計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっていること。計画の見直しとともに、修繕積立金の値上げも行なうこととした。
「予期せぬ災害や今回のような突発的な漏水事故に伴う出費、大規模修繕での追加工事の発生などに備え、常にある程度の資金を備えておくべきと考えました。長期修繕計画については、専門家のアドバイスを受けながら慎重に見直しを行ないました」(同氏)。
これらの改善点を踏まえ、8月に臨時総会を開催。すべての議題が承認され、区に申請したところ、9月21日に板橋区第2号となる「マンション管理計画認定」を取得できた。これと合わせ、管理会社が「マンション管理適正評価制度」への申請を行なっており、同日のダブル認定となった。
◆居住者の意見を受け止める「ご意見板」
認定を取得したことで、「マンションストック長寿命化等モデル事業」への2度目のチャレンジに弾みがついた。採択を目指し、「マンスト委員会」も立ち上げ。現在、どのような取り組みを行なっていくべきかについてアイディアを出し合っているところだ。
委員会で出たアイディアは、都度ロビーに掲示している。「話し合った結果は資料にまとめ全戸に配布するつもりでしたが、居住者の意見も聞こうということになり、ロビーに掲示することとしました。賛成なら赤シールを貼ってもらい、さらにポストイットで生の意見も収集することに。「理事会では『居住者からの意見を真摯に受け止めることが大切』ということに気が付いて、掲示板を『ご意見板』として今後も活用していきます」(同氏)。
「漏水が発生したときは、『なぜ築23年でこんな事故が…』と憤りや不安を感じましたが、そのおかげでマンションの改善すべき点が明確になり、具体的な計画を立てることができました。まさに『災い転じて福となす』。目指すは“ヴィンテージマンション”です」(同氏)と意気込んでいる。
なお、認定に至るまでを見てきた管理会社のフロントは、そのノウハウを持ち帰って社内で共有。個々のマンションで、認定取得を目指す際の手本にするという。
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このマンションがたった3ヵ月で認定を取得できたのは、役員の熱意、それに応える行政、そして自分たちの住まうマンションを良くしたいという居住者の思いがうまく重なったからこそ。どれが欠けても、スピード取得にはならなかったのではないだろう。
今後も定期的な見直しにより適正な管理を続け、居住者間のコミュニティを強化することで、住めば住むほど価値が上がる“ヴィンテージマンション”を目指してもらいたい。1年後、2年後が楽しみ。
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