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不動産に関するニュース

2021年11月29日

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需要高まる「音楽マンション」

 特定の入居者層をターゲットとした「コンセプト型賃貸」が広がる中、防音性能を高め、住戸内で楽器の演奏ができる賃貸マンションが人気を集めている。この分野に参入する事業者も増えているが、ただ防音性能を高めるだけではなく、入居者のハード・ソフトに関するニーズや、近隣の市場環境など、さまざまなノウハウが必要になる。そこで今回は、この分野で実績のある建設会社・越野建設(株)(東京都北区、代表取締役:越野充博氏)の「音楽マンション」への取り組みについて取材した。

「楽器が演奏できる」ことを付加価値とする賃貸住宅が人気を集めている

◆区のホール施工などで防音技術ノウハウ

 同社の創業は明治45(1912)年。創業100年を超える老舗建設会社だ。もともと、東京都北区周辺で官公庁関係の工事を多く手掛け、その中には庁舎に併設されたコンサートホールや、音楽室を持つ校舎など、防音工事技術が求められる大規模建築物も多く施工してきた。「そうした施設を多く建設してきた実績で、防音工事技術のノウハウを充分持っていました」と語るのは、同社企画開発部マーケティングチームマネージャーの土屋貴之氏。2012年から「音楽マンション」のブランドで展開し、高稼働を維持。オーナーの土地活用を中心にこれまでに38棟692戸を供給してきた実績があり、今や、演奏可能賃貸マンションのジャンルでは代表的なブランドの1つに成長した。

 同社が「音楽マンション」をスタートしたきっかけは10年ほど前。地元のJR「王子」駅圏に駐車場を保有していたオーナーが土地活用相談のために同社を訪れ、「音大生向けに楽器を演奏できる賃貸マンションを建てられないか」と相談したのがきっかけだった。王子エリアは東京芸術大学をはじめ、東京音楽大学、上野学園大学など都内の音楽大学に通いやすい立地であり、当時、他社の楽器演奏可能物件が注目されはじめていたことも影響したのか、同オーナーも音大生向けの物件に関心を持ったようだった。

 そこで同社は市場調査を実施。音大生をメインターゲットにすると、どうしても市場が限られ、安定した賃貸経営が難しいという結論に至った。しかし、音大を卒業しても、全員がプロの音楽家になるわけではなく、趣味で演奏活動を続ける人もいる。もちろん、音大卒でなくても音楽を趣味にしている人は多い。そこで同社は、「好きな時に趣味の演奏がしたい社会人」をメインターゲットに据えることで事業性が確保できると判断、事業化を決断した。

 そのコンセプトは今も変わらず、現在の入居者属性は社会人が78%、学生が22%。学生のうち約半数が東京芸大の音楽専攻の学生。社会人でも、趣味で楽しんでいる人からプロの演奏家まで幅広い層が入居している。

◆初弾物件は竣工1ヵ月前に満室に

 12年、初弾物件「アダージョ王子」(東京都北区、総戸数14戸)が完成。竣工1ヵ月前に満室になっただけでなく、築8年10ヵ月時点の全期間入居率は99.0%。空室の発生は入居者入れ替え期間程度で、募集すればすぐに入居者が決まるため、これまで家賃の改定もなく、経営も安定している。

 その後、オーナー同士の口コミで評判が広がり、4棟目は初の自社物件「ヴェージュエスコルタ」(東京都北区、総戸数18戸)を建設し、常設モデルルームを設置するなど、営業を本格化。10棟目前後まではほとんど広告せずに受注が進んだ。なお、毎年数棟ずつオーナーの土地活用として供給を続け、現在は38棟692戸にまで成長した。来春も、6物件109戸の音楽マンションが都内や埼玉県で竣工する予定。竣工前に満室になる物件も多く、「演奏可能」の需要の強さがうかがえる。

◆演奏音を「深夜の住宅地の静けさ」に

遮音二重床の断面図
換気装置も遮音仕様にして音漏れを防ぐ

 こうした入居率の高さは、必ずしも物件の希少性だけが理由ではない。入居者ニーズに沿った商品企画や賃料設定が支持されたのであろう。

 「音楽マンション」の防音性は、隣の住戸でのピアノの演奏音を「深夜の住宅地の静けさ」まで抑える水準の遮音性能60dbを目標値として設計。また、(一社)日本建築学会の示す遮音性能指針の「特級(特別に高い性能が要求された場合の性能水準)」も満たすように作りこんでいる。遮音二重サッシ、遮音二重床、遮音扉などの建具を導入して住戸の遮音性能を高めるほか、換気装置も遮音仕様にすることで、音漏れを防ぐ。

 モデルルームは、ファミリー向け1戸、ワンルームタイプ2戸。ワンルームの2戸では、防音性能のデモンストレーションを行なってオーナーにアピール。隣の住戸でピアノの演奏音を大音量で流すと、ただドアや窓を閉めただけの状態でも、耳を澄ましてようやく「聞こえるかも……?」というレベルにまで遮音することができる。

 こうした高い防音性能を実現することで、ピアノやアコーディオン、ヴァイオリン、アコースティックギター、フルート、ファゴット、三味線、筝、DTMなど幅広いジャンルの演奏に対応。共用廊下も、設計の段階からグランドピアノがスムーズに運べるように幅や曲がり角などに配慮している。ただし、音の響き方のメカニズムが特殊な、低音楽器やドラム、声楽などについては、限られた物件での対応となっている。

◆「住まいらしさ」を重視

単身者向けのモデルルーム。一見しただけでは防音仕様になっていることは分からない

 さらに、同社が物件を供給する際に重視しているのは、「住まいらしさ」。“日常生活の延長に音楽がある”という考えから、普段の生活で不便がないように設計している。「例えば、楽器演奏可能な賃貸住宅では、より防音性能を高めるためにスタジオに使われているような分厚く重量のある防音ドアを採用するケースもあります。入居者の音楽ライフを考えれば、それも選択肢の一つですが、当社では日常生活の中では違和感があると考えました。当社では高い防音性能を確保しつつ、なるべく一般的な日常生活と変わらないスタイルで生活できる『住まい』としての物件づくりを心掛けています」(土屋氏)。室内ドアは、ドアそのものの防音性能の高さだけでなく、上下のパッキンによって密閉性を高くする商品を採用している。

 ファミリー向けモデルルームは3LDKで、「一目見ただけでは防音性能が高いことが分からないようにしました」(土屋氏)という通り、一般的なファミリー向け賃貸住宅との違いをあまり感じられないつくりになっている。

◆「演奏できること」が付加価値に

近年は年間6棟程度を供給しており、どの物件も高稼働となっている。写真は21年に完成した「ヴィルトゥオーソ仙川」(東京都調布市、総戸数62戸)

 建築費は、同規模の一般的な鉄筋コンクリート造の賃貸マンションに比べて5%程度増加するのに対して、賃料水準は周辺相場よりも10%程度アップできるという。「入居者ターゲットである社会人が、趣味にかけられるコストとして、月に1万円程度と試算しています。コストと性能のバランスをうまく取ることで、賃料が上がり過ぎることもなく、より幅広い入居者層が手の届く水準にできているのではないでしょうか」(同氏)。こうした取り組みが奏功して、21年9月1日時点で稼働中の音楽マンション38棟692戸の入居率は99.3%、空室はわずか5戸となっている。

 高い入居率は、「演奏できる」物件自体の希少性の高さと、入居希望者のリスト化による効率的な募集、さらに入居者満足度の向上による長期入居の促進によるもの。入居者募集については、都内の楽器演奏可能な賃貸住宅を多く取り扱っている仲介会社に依頼するほか、会員組織「音楽マンション倶楽部」を活用。入居検討者に「メール会員」として同組織に登録してもらい、メールやLINEで新築物件の募集開始・既存物件の募集発生情報などを配信。現在の登録数は約900人にも上る。演奏可能物件を探している入居希望者に直接・いち早く情報を届ける。「『演奏できること』が音楽マンションの価値となっているため、内見をせずに決める方もいるほどです」(土屋氏)。

 また、長期入居促進に関しても音楽マンション倶楽部を活用。入居者は自動的に「入居者会員」となり、ミュージカルやコンサート等のチケットが当たる抽選の実施や入居者がかかわる音楽活動の告知協力など、さまざまな音楽活動サポートを行なう。また、提携企業や店舗での優待を利用できる。

◆「音楽マンション不動産」開始

 21年夏、同社では新たな取り組みとして新事業「音楽マンション不動産」をスタートした。これまで同社の事業エリアでのみ供給してきた音楽マンションだが、近年になって全国の地方主要都市の地主や建設会社、ユーザーから問い合わせが相次いでおり、そうした需要への対応として、地方圏での供給体制整備等を図る。地方の建設会社に対しては、同社が施工ノウハウや技術を伝えていく。「フランチャイズ形式にするのか、ライセンス形式にするのかはまだ決まっていませんが、当社営業エリア外での施工体制を整備することで、現地の地主やユーザーの需要に応えていきます」(同氏)。

 また、地主に対しては、同社子会社でこれまで音楽マンション等の管理業務を担ってきた(株)ケーシー不動産管理が、土地活用コンサルティングを提供していく。商談初期段階では、ウェブ会議システムを活用してオンライン相談を実施。計画が具体化してきた段階で担当者が現地に赴く。現在、福岡県などで商談が進んでいるという。

 また、ケーシー不動産管理では、音楽マンションに特化した仲介業務を本格的にスタートする。従来からの演奏可能賃貸を得意とする仲介会社の他に、自社でも客付けチャネルを持つことで、オーナーの賃貸経営の効率アップを図る。これまでに管理業務で培ったノウハウを生かし、楽器の種類だけでなく機種や演奏スタイル、演奏したい時間帯など、丁寧なヒアリングを行なった上で、適切な物件を提案していく。

 「当社の現在の人員体制だと、音楽マンションの施工はおおむね年間6棟程度。今後もこのペースを維持しつつ、地方圏でも音楽マンションが供給されるようにノウハウの提供や支援を行なっていきたい」(同氏)。

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 「演奏可能賃貸」というと、音楽の知識が豊富なスタッフが引っ張っているイメージがあるが、同社は今春に初めて音大出身者が入社するまで音楽の専門知識を持つ社員は皆無だった。一つひとつ、顧客対応を丁寧に進める中で知識を付けていき、入居者が求めるサービスや物件の在り方を追求している。同社の「音楽マンション」の成功は、経験や専門知識がなくても、不動産事業者がしっかり学ぶことで特殊な需要にも対応できるということを示す好例だ。

 そうした中で、「音楽マンション」の取り組みは特徴を際立たせた建物、限られた中で最大限のターゲット設定、事前のターゲット層の囲い込みと、コンセプト型賃貸の基本を忠実に押さえた取り組みだと考えられる。初弾物件は竣工から9年余りが経過しても平均稼働率が99.0%というのは、しっかりとしたマーケティングに基づくターゲット設定が奏功しているのだろう。

 プロ演奏家はどうしても大都市圏に集中せざるを得ないが、演奏を趣味とする人は全国各地に存在する。「演奏可能賃貸」の需要は全国にあるはず。今後の全国の音楽を趣味にする人たちの希望を叶える賃貸住宅の供給加速に期待したい。

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    また、弊社は東京都の新型コロナウイルス感染拡大防止に対する対策を講じ、

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